※Please scroll to the bottom for the English translation.
モーションアクターやスーツアクターとして業界の先頭を走り続ける杉口秀樹が、埼玉県に鍛刀道場を構える『刀王』こと川﨑晶平刀匠へ、一振りの刀を作って欲しいと願い出た…!!晶平刀匠は現代に於いて相州伝(そうしゅうでん:刀伝播の五箇伝の一)を伝える刀鍛冶のうち、もっとも高い極みに達している一人として評される名匠。その名匠が、作刀工程の公開を快諾してくれた事から、この動画シリーズの制作はスタートしました!
この動画シリーズは、杉口が晶平刀匠へ依頼した刀の制作過程…鉄の塊が美しく研ぎあげられた日本刀の姿へ生まれ変わる迄と、さらに杉口が、出来上がったその刀を用いた演舞を披露するまでを追う、これまでになかったドキュメンタリーです。
----------
第二回目は、『積み沸かし』、『鍛錬』の工程を公開します。
おそらくこの動画にたどり着いたほぼ全ての方は、初めて『積み沸かし』という言葉を聞くのではないでしょうか。また、『鍛錬』と聞いて想像するのは、まるで大玉の花火のように火花が飛び散る光景だと思いますが、実はそればかりではありません。刀鍛冶は何を見て考えながら『積み沸かし』や『鍛錬』を行っているのか・・・。想像しながらじっくりとご覧になってください。
【主な登場人物】
杉口秀樹 ( Hideki Sugiguchi ): 株式会社モーションアクター代表。
「SUG-AFTRA stunt performer」。日本XMA界の第一人者。モーションアクター歴20年のベテラン。
驚異の身体能力でハリウッド含め国内外の作品に多数出演。出演作品は下記リンク先をチェック!
【株式会社モーションアクター】 https://motionactor.co.jp/
【Twitter (@jagar001)】 https://twitter.com/jagar001
川﨑晶平(Akihira Kawasaki):刀鍛冶
現在相州伝(そうしゅうでん:刀伝播の五箇伝の一)を伝える刀鍛冶のうち、最も高い極みに達している一人として評される名匠。
【晶平鍛刀道場】 https://www.akihirakatana.com/
【Instagram】https://www.instagram.com/akihira.kokaji/?hl=ja
【友情出演】
下島房宙(Fusahiro Shimojima):刀鍛冶
美濃伝・関鍛冶の伝統を現代に伝える刀鍛冶。晶平刀匠とは旧知の間柄で埼玉県に鍛錬場を構える。
このプロジェクトには、たびたびご助力を頂く事となる。
【房宙日本刀鍛錬場】 https://www.samurai-sword.jp/
【今回の見どころ】
0:27
『積み沸かし』の準備
まずテコ棒(てこぼう)を作る。テコ皿と呼ばれる鋼の皿を持ち手となる棒の先へ鍛接する。接着を補完するために使用する粉はホウ砂(ほうしゃ)だ。
00:41
鍛接する直前、棒の先端の形状を整えたことに気が付いただろうか。
鍛接面をしっかりとくっつける為に、テコ棒の先を平たく潰して、開先(かいさき)を作ったのだ。
00:48
テコ皿を棒へしっかり鍛接し、一体化するため、手鎚で叩いては火床で沸かす作業を繰り返す。叩く事で鉄の内部の組織の向きが揃い、強度が増す。
火床へ沈めた鍛接部分の上へ松炭を重ね、鞴から火床へ一定の速度で風を送りながらも、晶平刀匠が見ているのは、鉄の色と炎の色だ。炎の色で鉄を沸かす時間や叩くタイミングを判断し、松炭や風量の過不足を検討して細やかに調整を行っている。
晶平刀匠は、手鎚や火掻き棒、だるま箸、水箒など、日本刀作りに使用する道具類のほとんどを、自分で制作する。道具は刀鍛冶にとって体の延長として機能する。つまり、身体に合わない道具を使う事は、作品の出来不出来にも直結するのだ。本動画の中で晶平刀匠が使用している道具類にもぜひ注目して欲しい。
01:28
もう一度ホウ砂を追加して手鎚で叩き、しっかりと鍛接する。最後に一気に温度を下げて鋼の温度を下げ、テコ棒の完成となる。
02:32
背後で聞こえるのは下島刀匠の声だ。この動画シリーズでは数回だけ撮影日にゲストを招いていた。下島刀匠は専門用語を理解しやすい言葉に翻訳しながら説明してくださるので、各工程が何を目的としたものかを理解しやすい。ゲストはもちろん、撮影スタッフにとってもありがたい勉強の時間だ。
02:41
小割りにした鋼片をテコ皿へ積み上げる。晶平刀匠は鋼片の断面を確認しながら、パズルのように隙間なく配置する。ただ並べているのではない。鋼を沸かして叩いた時に不純物を排出しやすいよう、綿密で美しい鋼になるよう、細かく配慮をしている。
03:15
杉口が注文打ちに踏み切ったその思いのたけを、晶平刀匠は受け止めた。そして、「鍛」という文字に込めた。この和紙が日本刀を作る工程にどう関係するのか、あなたには想像できるだろうか。
ところで「刀王」とは? ある時、晶平は「刀工」と書こうとした。その時、うっかりと「工」ではなく「王」と書いたのだ。
彼は思わずほくそ笑んだ。「僕は「工」ではなく「王」であるべきだ、と。
03:58
火床から舞い上がった灰がまるで粉雪のように舞う中を、杉口は晶平刀匠へ、思いを込めた和紙を手渡す。
04:33
小割りにした鋼を、彼は彼の基準に沿って選びながらテコ皿へ乗せてゆく。それらを「鍛」の」和紙で丁寧にくるみ、粘土を溶いた泥をかけ、藁灰をまとわせ、灰がはがれないように手のひらでしっかりと包む。たったそれだけの作業に見えるが、晶平は非常に丁寧にそれらを行う。
単純な作業であっても手を抜く事を、彼は良しとしない。それは刀王であろうとする晶平にとってあり得ない事だ。晶平の日本刀は常に至上最高の作品であるべきだが、単純な作業で手を抜いた作品は、それなりの平凡なものにしかならない。晶平は作品を作るために、己を非常に厳しく律する。多くの刀鍛冶は、代々職人の家系である。しかし、彼の実家は武家である。彼の中に流れる武士の血が、彼をそうさせるのかもしれない。
06:01
積み沸かし
和紙で包んだ鋼を高温で沸かし、叩く。それを繰り返してひとつの塊にする工程だ。
06:12
実は、右手方向で炭を寄せているのは杉口だ。動画ではカットされているが、炭の寄せ方、乗せる場所など、晶平刀匠から説明を受けながら作業していた。
06:30
鞴の音、火床へ送られる風の音、炎の色、松炭の爆ぜる音・・・・晶平刀匠が何を考えながらそれらを感じているか、しばらくの間想像を膨らませてみて欲しい。
07:24
鍛錬が始まる。誰もが想像する刀鍛冶の仕事は、ほとんどがこの工程だけではないだろうか。
鋼を熱しては大鎚で叩いて不純物を弾き飛ばしながら、美しい立方体へと成型してゆく。
08:30
下島刀匠による先手(さきて:大鎚を振るう者)と、大玉の花火のように飛散する火花の迫力、とくとご覧あれ。
ところで、飛散しているのは「火」だけではない。そのほとんどが「沸騰した不純物」である。したがって、これが体に当ると「熱い」だけではなく、「痛い」。これだけの量の「沸騰した不純物」をまともに受けても微動だにしない二人の刀匠の、迷いない動きに注目して欲しい。
09:01
折り返し鍛錬は、不純物の除去はもとより、炭素量を均一化し鋼自体の強度を上げる事が目的だ。そのために鋼を何度も折り返すのだが、完成した日本刀に現れる美しい地景は、この工程を経ることで産まれるのだ。
※地景:日本刀の外観は、刃側の白い刀文の部分と棟側の黒い部分に分かれている。黒い部分に現れる美しい層のような景色の事を地景と呼ぶ。
09:12
高温の鋼に少量の水をかけて叩く事で、水蒸気爆発が起きて鋼表面の不純物を弾き飛ばす。そして、鏨で切り込みを入れてから手鎚で叩いて折り畳み、再び立方体に成型する。無駄なく美しく進む折り返しの工程は、見ていて気持ちがいい。
10:10
炎の色が変ってゆく。赤から紫、そして青へと。
10:15
一瞬の「呼び出し」。大きくなる鞴の音。晶平刀匠の「よしっ!!」。
10:29
圧倒的な熱量の火花に、誰もが見惚れる瞬間・・・!
::::::::::::::::
次回の配信もお楽しみに!
チャンネル登録もお願いいたします。
ご視聴ありがとうございました!